社交不安症とは?
披露宴でスピーチをする、会議で発表をするなど、人前で何かをしなければならない機会において、緊張をすることは誰にでもあります。しかし、こうした場面で極度に緊張し、「失敗するのではないか?」と強い不安を抱くものを「社交不安症」といいます。
症状として、顔が赤くなる(赤面)、声が震える、動悸、発汗、吐き気、めまいなど…
分類は異なる面もありますが、重症な「あがり症」と捉えると分かりやすいかもしれません。昔から「対人恐怖」や「赤面恐怖」と表現されてきました。有病率は0.5~2%。女性よりも男性の方がやや多い傾向があります。程度は人それぞれであり軽度の場合もありますが、人前で話すのが嫌で会議を休んだり、食べているのが嫌でレストランに行けなかったりなど、仕事や社会活動がスムーズに行えず支障をきたすケースもあります。
また、自分の表情や態度、容姿等が他人に不快な思いを抱かせているという不安。他者が目をそらし、咳払い、ひそひそ話をするなどが、自分のせいだと思い込む確信型の対人恐怖症もあります。こうした不安は過剰なものだと本人も分かっていますが、なかなか打ち消すことができません。性格の問題と諦めている人もいますが、適切な対応を受ければ克服できることが分かっています。
「場面緘黙(ばめんかんもく)」…自宅などくつろいだ環境では普通に話せるのに、学校などある一定の場面では全く発生ができなくなる症状
「書痙(しょけい)」…サインをするときなどに、人が見ていると手が震えて字が書けない症状
気持ちだけでは克服できない
以前はこれらの症状は性格的なもので、精神力で克服すべきものとされていました。しかし、精神力や心がけではこの傾向が改善しない人々が多くおり、一つの疾患群として考えれれるようになりました。
薬物療法と認知行動療法
社交不安症における原因はハッキリとしたことはわかっていませんが、近年は適切な薬物療法(抗不安薬やSSRI)と認知行動療法(感じている恐怖や不安が自分の思い込みであることを学び、できる行動を増やしていく)の治療が有効であることがわかっています。ただし、薬物を使う事に対する抵抗や根本的な改善を目指すにあたり、漢方を活用するケースが増えており、当店でもよくご相談いただく内容の一つです。
東洋医学が考える社交不安症
東洋医学では「気・血・水」のバランスから病状を判断していきますが、例えば「あがり症」は一時的な”気の上昇”がもたらすものと捉えます。通常の気(エネルギー)は体中を絶えず巡っている状態ですが、元々気は上半身に溜まりやすい性質があり(空気も含め、温かいものは上昇する性質がある)環境の変化などをきっかけに気の流れに不具合が生じたことで、血・水の流れにもアンバランスを生じてしまうと考えます。
これらの状態を改善する漢方薬はいくつかあり、その方の体質や症状に合わせ、適切なお薬を選択することで対応します。また、日頃の食生活や生活習慣の改善、認知行動療法の導入なども合わせることで、日常生活の不便が軽減できることが多いと思われます。
社交不安症(ASD)の症例
症例(20代 女性)
学生の頃から、人とのコミュニケーションが苦手な性格ではあったが、就職をきっかけに仕事中のストレスが増加…特に人前で話をすることに苦痛を感じるようになりました。
半年ほど前から仕事中の過緊張に加え、動悸や息切れに悩まされる日々が始まったそうです。段々と仕事も遅刻することやお休みする回数が増えていることに不安を感じ、当店へご相談へ来られました。
病院にて安定剤と睡眠導入薬を処方されています。
お話をしているととても落ち着いており、特にお辛い症状があるようには見受けられませんでしたが、少し緊張気味ではあっと思います。
問診と気の流れをお調べした結果
①自律神経を調節する漢方薬
②気血の巡りを良くする漢方薬
をまずは二週間お出ししました。
始めの3日間はあまり漢方の効き目は実感できなかったようですが、4日目あたりから仕事中の動悸や息切れが軽減されていることを実感。
その後はまだコミュニケーションに対する恐怖心は感じるものの、以前に比べると格段に過ごしやすくなったようです。
お薬を飲み始め3ケ月が経過しましたが、状態はさらに良くなり、どちらかというと症状を予防するために漢方をご活用いただいています。
笑顔も増え、大変うれしく思っています。