パニック障害とは?
病的な不安(あるいは恐怖)を主症状とする病気を「不安症」といいます。そのひとつが「パニック障害(パニック症)」で、急性の強い不安発作(パニック発作)が特徴です。パニック発作はなんの前触れもなく突然起こります。乗り物の中、人ごみの中、お店の中、あるいは一人でリラックスしている時など、場所や状況は問いません。激しい動悸や息苦しさ、胸苦しさ、ふるえ、めまい、しびれ、吐き気などの様々な症状が一気に現れてきます。統計では女性に多く、男性の2.5倍の患者数。幅広い年齢層に現れるが60歳以降では減少。生涯有病率は2~3%と頻度の高い病気です。
発作で死ぬことはありません!
発作はあまりにもツラく、患者さんによっては「このまま死んでしまうのでは?」「気が変になってしまうのでは?」と激しい不安と恐怖に襲われます。しかし、それにより命を落とすことは無いことが分かっています。発作も数分~数十分で収まります。しかし、本人にとっては「この苦しみが一生続くのでは?」「これだけ苦しいなら命を無くした方が楽になれる」と心を追い込むことで、通常の日々の生活に戻ることを困難に感じさせてしまう病気です。昨日まであたり前にできていたことが奪われていく不安と恐怖が心と体を追い込みます。
ほかの病気に間違われることも多い
パニック発作の多くが、動悸がしたり、息苦しくなったりするために、狭心症などの心臓の病気や、喘息や過換気症候群などの呼吸器の病気だと間違われるケースも多いようです。納得のいく原因を見いだせないため、検査を求めて次々多くの病院をまわる人もいます。パニック障害の患者さんで最初に精神科を訪れる人は10パーセントに過ぎません。また、70%以上の人が診断されるまでに10回以上内科、耳鼻科、産婦人科など精神科以外をまわったという統計があります。
パニック発作の原因
パニック障害は、精神的なストレスのみが主な原因であるとはいえません。実は、パニック症の患者をみると、一親等内にパニック症経験のある人を持つ場合は、もたない場合の4~7倍も発症率が高いという報告があります。家族であれば、性格や考え方が似ている面があるのは当然です。
また、近年は脳科学の発達により、脳の中の状態がある程度わかるようになってきました。一説ではパニック障害は「脳幹の青斑核の誤作動」という報告もあります。脳幹は生命活動の基礎的な働きをしていて、脳幹部にある青斑核は”危険を身体に知らせる警報器”の役割を果たしています。パニック障害では、実際には心臓にも呼吸器にも問題が起きていないのに、突然、青斑核が危険警報を鳴らして止まらなくなった状態と言えます。脳内の神経伝達物質(ノルアドレナリン)が青斑核から過剰に放出されることによって、警報が鳴り続けパニック発作を起こすのです。誤報であっても警報ですから、恐怖感が生じ、体は反応して危険に備えます。まさに「脳に騙された」幻の発作と言えます。
したがって、パニック発作は「遺伝的な素因をベースにストレスが加わり発症し、脳機能のトラブルによって引き起こされる病気」なのです。
発作→不安の悪循環
命の危険はないパニック発作ですが、ご本人はまた発作に襲われるのではないかと、強い不安を感じます(予期不安)。すると、この不安がきっかけとなり生じる発作(状況準備性発作)を繰り返すことがあります。発作を繰り返すようになると、発作に襲われた場所や発作が起きたときに逃げられない場所を避けるようになります(広場恐怖※)。これらがひどくなると外出を避けるようになり、抑うつ状態に陥ることもある為、適切な治療と対応がとても重要です。
※広場恐怖:いざというときに逃げられない場所や助けを求められない場所を避けること。一人での外出や乗り物に乗ること。人の多い場所を避けます。広場とは広い場所のみをさすのではなく、人が集まる場所を概念的に示しています。
パニック障害の改善策
治療の第一歩は「気のせいでも仮病でもなくパニック障害という病気だ」と理解することです。そして、発作はつらく、とても怖いものだけど「発作で死ぬことはない。きちんと治療すれば治る病気であること」を知ることです。
また、病院で適正な薬物療法を受けることで基本的な発作は改善に向かうことが多いです。ただし、薬物療法は脳の働きそのものを変えるのではなく、あくまで「脳の誤作動にブレーキをかけるもの」とご理解ください。抗不安薬は発作にブレーキをかけることができますので、体が辛い間は上手に活用することは間違いではありません。しかし、ブレーキをかけるばかりでは、あなたの人生は前に進みませんよね?少しずつでも前に進む力を戻すには、食生活を中心とした日々の生活習慣やモノの考え方を変えていく工夫が必要です。
また、「漢方薬は心と脳に働きかけ、あなたの背中を優しく押し出しアクセルをかけてくれるもの」と考えています。”正しいブレーキとアクセルの使い分けこそが、元の生活に戻る最善策である”というのが、当店の方針です。
パニック障害の漢方薬
当店が取り扱う漢方薬は、原料からこだわり、少しでも有効性の高いと思われるものを取り扱っています。ただし、パニック障害=この漢方!というように、お薬が決まっているわけではありません。お客様の体質や症状のレベルに合わせ、オーダーメイドで調整するのが特徴です。
一般的にパニック傾向のある方は物事をイメージで捉えることが得意な方が多いと言われます。イメージ力が強いが為に、少しの不安を増幅させる癖がついているのかもしれません。パニック障害に対し主に東洋医学では、「気(気持ち・エネルギー)」の流れに乱れが生じていると考え、気の流れを整える漢方薬を選薬していきます。
お薬の服用期間
お薬の服用期間については個人差がありますが、まずは1~3ケ月の間に変化が現れることを目標としています。お客様によっては、服用した一週目から体調が変わるケースも多々ありますが、お体への変化には個人差があることはご理解ください。また、脳の働きをはじめ、根本的な改善となると半年~、一年以上~と長い時間がかかる可能性もございます。
当店の今までのお客様の中には…「体調不良により退学した大学を改めて受験しなおします」「パニックが怖くて控えていたライブに久しぶりに行けました」「今まで何年も病院通いだったけど、いわい薬局に相談して本当に良かったです」とのお言葉を頂いています。これは、私共にとっても大きな喜びです。
お薬の卒業
体調が整うまではお薬があなたの生活を支える役割を果たしますが、最後には自分で立ち上がり、人生を前進させていくことが必要です。このとき漢方を活用することのメリットは、体に優しいだけでなく、抗不安薬などの病院のお薬を減らすきっかけにもなるという点です。自分のチカラだけで抗不安薬を減らすことは、文字通り大きな不安を伴うこともありますが、漢方には自転車の補助輪のような役割がある為、あなたを支えながら前へ進む手助けをしてくれることでしょう。また、漢方薬には習慣性・耐性はありませんので、少しづつ服用回数を減らし、最終的には全体的なお薬から卒業できることを目指します。
その為にも、お薬に頼らなくてもパニックを起こさないよう、生活習慣や思考を整え、自身のコントロール力を修正しておくことも重要であると考えています。その為の”養生アドバイス”もカウンセリングを通してお伝えして参りますのでお任せください!
パニック障害の症例
症例1(30代 女性)
まだ小さなお子様を子育て中の女性…学生のころに鬱の症状があり、メンタルクリニックを受診した経験があるものの、大人になってからは大きな症状は落ち着いていました。
数カ月前から元々働いていた職場に復帰し、お子様を保育園に預けるようになったころから忙しさの為か?気持ちがソワソワして落ち着かない気がしていたそうです。
そんなある日、職場へ向かう電車の中で、軽い過呼吸と眩暈を感じ途中下車。そのときは数分で症状は治まったものの、その日から「また同じ症状が出てしまうかもしれない」という不安から電車や飛行機などの乗り物に乗ることに嫌悪感を抱くようになってしまいました。
仕事も復帰したばかりなので休みたくない。子育てもある。日々のソワソワ感と過呼吸を中心としたパニック症状を漢方で予防・改善したいと思いご相談に来られました。学生のころの鬱病治療の際にも漢方を使用した経験があり、漢方には特別な思いがあるとのこと。
問診の結果、自律神経を整えるお薬と補助剤をご提案。
二週間後…
ソワソワ感は服薬翌日から楽になったそうでビックリされていました。パニック症状ここ二週間は出ていない
更に二週間後…
テレビで辛いニュースを見てから症状が再発気味。夜に気持ちが落ち着かず眠りの質も低下。パニック症状は出ていない。→お薬に加え、心が辛くなるニュースは見ない様にすること。心を落ち着かせるツボの養生をご紹介をして対応。
さらに二週間後…
前回以降、体の調子はよい。お仕事にも前向きに取り組めている。
更に一ヶ月後…
夜になると多少の不安感を感じることもあるが、以前に比べれば全く問題ない。
現在3ケ月以上が経過しましたが体調は良好。ただし、夏休みに飛行機に乗る予定がある為引き続き体質改善の為服薬を継続中です。
症例2(20代 女性)
主な不調は
・電車やエレベーターに乗れない(過呼吸)
・ストレスと過労による神経過敏(臭いや音)で外出が苦手。
・生理前の各種不調(イライラ、めまい、胸の圧迫感など)
きっかけは仕事の上司との人間関係で大きなストレスを感じるようになったことが始まりだそうです。一年前に休職し、現在は自宅で療養されていますが、症状が一向に良くならない為ご相談に来られました。
元々緊張しやすく、過度な不安や恐れを感じやすい性格であるとのこと。
今までも病院にて様々な漢方薬を試したが効果なし。安定剤は服用しているが、このままの継続使用には不安を感じられているようです。
同世代の友人はすでに結婚して子供がいる人が多い状況に対し、自分は外出も気軽にできないことにも焦りを感じられていました。
問診の結果、自律神経の調整を行う漢方薬と補助剤を2種類ご提案。2週間様子を見ることにしました。
2週間後…
少し体は楽に感じるが、特別に大きな変化はなし。ただし、食欲は出てきている。
1か月後…
頭のボーっと感が和らいだ。体はしんどいが気持ちは少し前向きになっている。生理前の不調もいつもより軽めだった。
2か月後…
久しぶりの外出も何とか乗り越えた。まだ不安はあるが明らかに服薬前と違う感覚。
まだまだ治療の過程である為、神経過敏や各種不調は残っていますが、ご本人も希望の光が見え始めているようでお薬を続けてくださっています。焦らず、一歩一歩修正できるよう、サポートできればと思います。